総合評定値(P点)の計算方法
経審は、W点からZ点を計算して、総合評定値(P点)を出します。P点を計算する式は次の通りです。
☆総合評点(P)=0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W (小数点第1位四捨五入)
これを受審業種ごとに計算していきます。内部で計算式がある場合は、混同しないようにWXYZは使わないようにします。
→どちらも激変緩和措置があり、X1は2年平均か3年平均、X2の自己資本の額は審査基準日の年度単年のみか、2年平均のいずれかを選択できます。
Y点は、決算報告書の数値から下記の8つの指標を算出します。この計算は自分でする必要はなく、経営分析機関に申請して計算してもらうことになります。8つの指標ごとに導き出される点数は、それぞれ下限と上限があり、無限にプラスになったり無限にマイナスになることはありません。
ここでは分析指標の計算式を示します。中身は別に詳しく説明します。
①純支払利息比率(R1)=(支払利息-受取利息配当金)×100÷売上高
下限:5.1 上限:-0.3(小数点第4位四捨五入)※計算結果が低い数値程高評価になるため、「-0.3」を上限値としています。
②負債回転期間(R2)=(流動負債+固定負債)÷( 売上高÷12)
下限:18.0 上限:0.9(小数点第4位四捨五入)※計算結果が低い数値程高評価になるため、「0.9」を上限値としています。
③総資本売上総利益率(R3)=(売上総利益 ×100)÷((前期総資本+当期総資本)÷2)
下限:6.5 上限:63.6(小数点第4位四捨五入)
※個人の場合、売上総利益=完成工事総利益
※総資本=負債純資産合計
※総資本(2期平均)=3000 万円に満たない場合は、3000 万円 とみなす
④売上高経常利益率(R4)=(経常利益 ×100)÷売上高
下限:-8.5 上限:5.1(小数点第4位四捨五入)
※個人の場合、経常利益=事業主利益
⑤自己資本対固定資産比率(R5)=(自己資本×100)÷固定資産
下限:-76.5 上限:350.0(小数点第4位四捨五入)
⑥自己資本比率(R6)= 自己資本 ×100 ÷総資本
下限:-68.6 上限:68.5(小数点第4位四捨五入)
⑦営業キャッシュ・フロー(R7)=((前期営業キャッシュ・フロー+当期営業キャッシュフロー)÷2)÷1億
下限:-10.0 上限:15.0(小数点第4位四捨五入)
→営業キャッシュ・フロー= 経常利益+減価償却実施額-法人税住民税及び事業税±貸倒引当金増減額±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±未成工事受入金増減額
※売掛債権=受取手形+完成工事未収入金
※仕入債務=支払手形+工事未払金
※棚卸資産=未成工事支出金+材料貯蔵品
⑧利益剰余金(R8)= 利益剰余金÷1億
下限:-3.0 上限:100.0(小数点第4位四捨五入)
※利益剰余金=利益剰余金合計
※個人の場合、利益剰余金=純資産合計
この8つの指標を次の数式に当てはめます。
A=-0.4650×R1 -0.0508×R2 +0.0264×R3 +0.0277×R4+0.0011×R5 +0.0089×R6 +0.0818×R7 +0.0172×R8 + 0.1906(小数点第3位四捨五入)
そして最終的にY点を求めます。
Y=167.3×A+583(小数点第1位四捨五入)
このY点を攻略していくことがP点アップの王道であると思います。これは別にお話しします。
Z点は、技術職員数値の評点(Z1)と、元請完成工事高の評点(Z2)で決まります。
Z1は、技術職員ごとに下記の基準で点数を当てはめ、その合計を評点テーブルに当てはめて求めます。
・1級技術者+監理技術者資格者証保有+監理技術者講習受講・・・6点
・上記以外の1級技術者・・・5点
・監理技術者を補佐するものとして配置可能な1級技士補・・・4点
・基幹技能者レベル4技能者・・・3点
・2級技士または1級技能士レベル3技能者・・・2点
・その他(実務経験10年等)・・・1点
→これは、技術職員1名につき2業種までしか登録できません。3業種以上受審する場合は、このことに注意して技術職員を振り分ける必要があります。また取得資格によって登録できる業種が異なります。すべての資格がすべての業種に登録可能というわけではないのでこの点も注意すべき点です。
Z2は、工事の種類別に元請の完成工事高を出し、これを評点テーブルに当てはめて求めます。これも激変緩和措置があり、2年平均か3年平均かを選択できますが、X1と連動します
W点は、その他の審査項目です。社会性等評点とも呼ばれます。審査項目は下記の通りです。
W1(労働福祉の状況)
①雇用保険未加入・・・-40点 ②健康保険未加入・・・-40点 ③厚生年金保険未加入・・・-40点
→いずれも適用除外は除かれます。減点のみで、いずれも加入なら点数は0点です(当然に加入するものだから)。
④建退共への加入・・・15点 ⑤退職一時金制度若しくは企業年金制度の導入・・・15点 ⑥法定外労災制度への加入・・・15点
→いずれも未加入なら0点です。マイナスになることはありません(加入することで従業員の福利厚生になるから)。
⑦若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況
⑦-1 若年技術職員の継続的な育成及び確保の状況・・・技術職員名簿人数の15%以上なら1点
⑦-2 新規若年技術職員の育成及び確保の状況・・・前回審査時の技術職員名簿人数から増加した若年技術者の人数が技術職員名簿人数の15%以上なら1点
→若年技術者とは、審査基準日時点で満35歳未満の技術者のことです。
⑧知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況
→下記の指標を評点テーブルに当てはめ、計算します。
技術者数(T1):主任技術者、監理技術者資格を有する者、登録基幹技能者講習修了者、 2級技士補若しくは1級技士補の数
技能者数(T2):審査基準日以前3年間に施工に従事した者の数
技術者点(T3):CPD(又はCPDS)取得状況評価点
技能者点(T4):能力評価基準 レベルアップ評価点
∴W1⑧=(T1÷(T1+T2))×T3+(T2÷(T1+T2))×T4 (小数点以下切り捨て。MAX10点)
⑨ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況
令和5年から新設されました。
→えるぼし、くるみん、ユースエールのいずれかを取得していれば加点されます。最大5点です。
⑩建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(CCUS の導入状況)
令和5年から新設されました。
→CCUS(建設キャリアアップシステム)上での現場・契約情報登録及びカードリーダーの設置等の技能労働者の就業履歴を蓄積するために必要な措置を実施しており、審査対象外を除く、1年間のすべての建設工事で行っているのなら15点、1年間のすべての公共工事で行っているのなら10点が加点されます。審査対象外は国外の工事、軽微な工事等です。
W2(建設業の営業継続の状況)
建設業の営業年数(W21)と民事再生法又は会社更生法適用の有無(W22)の数値を足します。W21は営業年数に応じて点数が決まっており、5年以下は0点、35年以上で60点です。また、W22は民事再生法、会社更生法の適用を受けていると-60点です。更生手続終結の決定を受けていない限りは-60点です。
W3(防災協定締結の有無)
防災協定を締結していれば20点が加点されます。
W4(法令遵守の状況)
指示処分・・・-15点 営業の全部もしくは一部の停止命令・・・-30点
→減点のみです。なければ0点です。
W5(建設業の経理の状況)
監査の受審状況(W51)と公認会計士等数(W52)から求めます。
W51は会計監査人設置は20点、会計参与設置は10点、経理処理の適正を確認した旨の書類の提出は2点が加点されます。
W52は公認会計士、税理士、登録1級建設業経理士、登録2級建設業経理士が在籍していれば加点されますが、2級経理士は人数に0.4を乗じます。計算された在籍人数を評点テーブルにより求めます。MAXは10点で、売上10億円未満なら、1級経理士1名+2級経理士1名で満点が取れます。
W6(研究開発の状況)
平均研究開発費を評点テーブルに当てはめて求めます。
W7(建設機械の所有及びリース台数)
建設機械の所有又はリースがあれば加点されます。リース車両は、審査基準日より1年7ヶ月以上の期間が残っている車両や重機に限ります。令和5年より建設機械の機種対象が拡大されました。ダンプはこれまで5t以上の大型ダンプだけだったのが、土砂の運搬が可能なすべてのダンプとなり、2tダンプ等でも可能となりました。またローラー等の締固め用の機械や高所作業車なども対象となりました。これらが1台以上あれば加点されます。MAXは14台以上で15点です。
W8(国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況)
ISO9001または14001に登録又は認証されていると加点ですが、登録範囲に建設業が含まれていない場合及び認証範囲が一部の支店等に限られている場合は対象外となります。
令和5年からエコアクション21の登録でも加点となりましたが、ISO14001との重複加点はありません。
以上を考慮の上、P点を算出していくことになります。